推し活に救われる人・壊される人──境界線を失うとき、心で何が起きているのか

スマホを持つ手

「最近、推し活がちょっとしんどい。」

そんなふうに感じる瞬間はありませんか。

推しのことが嫌いになったわけじゃない。
むしろ好きだからこそ、追いかけたくなる。
でも気づくと気持ちが落ち着かない。
SNSを見るとざわっとする。
お金や時間の使い方にも、少し迷いが出てくる。

推し活は本来、すごく楽しいものです。
日々を支えてくれる、大切な拠り所でもあります。

この記事では、現役の公認心理師の視点から、推し活で「救われる」と「疲れる」が同時に起きる理由 を分かりやすく解説します。

やめる必要はありません。
ただ、“ちょうどいい距離” を知るだけで、推し活はもっと健やかで、あなたらしいものになります。


目次

推し活に救われる理由──人は「好き」によって回復する

推し活が心を支えるのは、とても自然なことです。

日々のストレスから少し離れられる

仕事、家事、人間関係。
がんばる毎日の中で、推しの存在は小さな休憩所になります。

「今日もがんばれそう」
そんな気持ちにしてくれるのは、推しの力です。

“自分の好き”を思い出せる

推し活は、誰にも邪魔されない「好き」の時間。
評価も役割も関係なく、ただ気持ちが動く。

この“好きでいられる瞬間”が、心の回復に役立ちます。

救われるのは悪いことじゃない

「推しに支えられてるなんて…」と責める必要はありません。

人は、何かに寄りかかりながら生きている。
その一つが推しだっただけのことです。


それでも“疲れ”が出るのはなぜ?──心のバランスが揺れる瞬間

「好きなのに少ししんどい」
その矛盾には、小さな心理の動きがあります。

感情が忙しくなりすぎる

推しの情報が更新されるとワクワクする一方で、
思うようにいかないと落ち込む。

特にSNSは、感情の上下が起こりやすい場所。
気づかないうちに心が少し疲れます。

お金・時間のバランスが崩れやすい

最初は楽しかったはずが、

  • 課金が増える
  • 夜更かしが続く
  • 日常より推し優先が増える

など、無理のサインが少しずつ出てきます。

深刻ではないけれど、「ちょっと偏ってるかも…」という違和感が残る。

他人の“推し方”に振り回される

SNSで流れてくる他人の熱量や投稿。
無意識に比べてしまう。
焦る。
置いていかれる気がする。

これはあなたが弱いのではなく、
SNSが自分と他人の境界線を揺らす仕組みだからです。


“境界線”が揺らぐと、心が落ち着かなくなる

推し活がしんどくなる背景には、自分と推しのあいだの「心の境界線」が薄くなる現象があります。

境界線とは「自分の心のスペース」

  • どこまでが自分の感情で、
  • どこからが“推しに関する外側の情報”なのか。

この境界があることで、心は整います。

距離が近くなりすぎると起こること

  • 推しの投稿で気持ちが大きく動く
  • 他人の反応が気になりすぎる
  • スケジュールに振り回される

落ち着かない感覚が続きます。

“投影”は悪いことではないけど、要注意

人は誰しも、推しに「こうなりたい」 「こう生きたい」を重ねます。

こういった心の働きのことを、心理学では“投影”“同一化”と言います。

投影が強くなりすぎると、推しと自分の境界が曖昧になり、気持ちが不安定になりやすいのです。


軽い依存に向かいやすいサイン──当てはまったら少し休憩を

依存=重症ではありません。
まずは“軽い疲れ”のサインを知ることが大切です。

サイン

  • 推し情報が気になりすぎて手が止まる
  • SNSをチェックして気持ちが乱れやすい
  • 課金が予算を少し超える
  • 他のことに集中しづらい
  • 好きなのに、なぜか疲れる

軽度でも、心の境界線が疲れている証拠です。


今日からできる“ちょうどいい距離”の作り方

スマホを置く。その脇には温かいお茶。

推し活は、無理してやめる必要はありません。
今より少しラクにするだけで、楽しさは戻ってきます。

① 推しの時間を「なんとなく」分けてみる

推し活の時間を、きっちり制限する必要はありません。

ただ、

  • 家事や仕事がひと段落したタイミングで見る
  • 寝る前のゆるい時間にまとめる
  • 移動中や休憩中に楽しむ

など、“どのタイミングで推し活を見るか”を自分なりに決めておくと、
気持ちが落ち着きやすくなります。

ポイントは、“無理して減らす”よりも“ちょうどいい場所を作る”こと。
生活とのバランスをゆるく整えるだけで十分です。

② 推し活予算を決める

「毎月この範囲なら安心」といった自分なりのラインを作ると、心に余裕が生まれます。

③ 推し以外の楽しみをひとつ足す

  • カフェ
  • 散歩
  • 軽い運動
  • ドラマ

“推しだけ”に寄りかからないように、楽しみを分散させる。

④ SNSとの距離を調整する

  • 通知をオフにする
  • 見る時間を決める
  • フォローを少し整理する

心がかなりラクになります。

⑤ 整えることで、推し活はもっと楽しくなる

推しを嫌いになる必要はありません。
距離を整えることで、推し活の質は上がります。


まとめ──推し活は「好き」を大切にするためのもの

推し活に救われるのも、
ちょっと疲れるのも、ぜんぶ自然なこと。

大事なのは、
あなたの気持ちが軽くなる距離
を取り戻すこと。

その距離さえ整えば、
推し活はもっと優しく、もっと楽しいものになります。

あなたのペースでいい。
これからも、心地よく推しを好きでいられるように。

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筆者:やまだ(公認心理師/Re-Lab編集長)
心理・教育・福祉の現場で人の変化を支援してきた経験をもとに、
「人が変わる瞬間」をテーマに発信しています。

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